ASICとは?FPGAとの違い・種類・メリット・開発の流れまでわかりやすく解説 (後半)

ASICの開発フロー

ASICの開発は、一般的に「設計」「試作・評価」「量産」という段階に分けて進めます。製品の仕様や回路規模、アナログ・デジタルなどの設計内容によって期間は変わりますが、各工程で必要な検討や評価を積み重ねながら量産化を目指します。

ASIC開発フローチャート

設計フェーズでやること

設計フェーズでは、まずASICに求める機能や電気的特性、使用環境などを明確にします。
具体的には、システム構成や回路仕様の検討から始まり、回路設計、回路シミュレーション、レイアウト設計などを進めます。アナログASICでは、動作電圧、電流、精度、温度特性、ノイズなど、製品の用途に応じた電気的特性を詳細に検討することが重要です。
設計した回路が要求仕様を満たしているか確認し、問題がなければ試作へ進みます。

試作と評価フェーズでやること

設計した回路を実際の半導体として製造し、試作品の評価を行います。
評価では、回路が設計どおりに動作するかだけでなく、電気的特性、消費電力、温度特性、ノイズ、信頼性など、実際の使用環境を想定して確認します。
評価結果によっては、回路やレイアウトを修正して再試作する場合もあります。そのため、量産へ移行する前に十分な評価期間を確保することが重要です。

量産フェーズでやること

試作・評価によって要求仕様を満たしていることを確認した後、量産へ移行します。
量産では、半導体製造だけでなく、パッケージ、テスト、品質管理、供給体制なども含めて安定した生産体制を構築します。
また、ASICは製品に組み込んだ後も長期間使用されるケースがあるため、量産後の供給や品質管理まで考慮して開発計画を立てることが重要です。

ASICの主な用途と採用分野

ASICは、特定の製品やシステムに必要な機能を専用のICとして実現できるため、さまざまな分野で利用されています。
特に、高い処理性能、低消費電力、小型化、特定用途への最適化などが求められる製品では、ASICが選択肢となります。

車載とADAS

自動車では、ADAS(先進運転支援システム)や各種センサー、車載制御システムなど、さまざまな電子制御が利用されています。
これらのシステムでは、限られたスペースや電力の中で安定した処理性能を実現する必要があります。専用回路として設計できるASICは、車載機器の用途に合わせた回路最適化に活用されています。

産業機器とFA

FA(Factory Automation)や産業機器では、モーター制御、センサー処理、計測、制御など、用途ごとに異なる電子回路が必要になります。
ASICを採用することで、製品固有の処理を専用回路として実装し、基板上の部品点数削減や小型化、消費電力の低減などを検討できます。
また、既存製品で使用していたICがEOL(End of Life)となった場合に、代替品が見つからなければ、必要な機能をASICとして再構成する方法もあります。

医療機器

医療機器では、センサーから取得した信号の処理や計測、制御などに電子回路が使用されています。
特に、製品ごとに求められる仕様が異なる場合には、専用ICとして必要な機能を集積するASICが選択肢となります。

通信・ネットワーク・IoT機器

通信機器やネットワーク機器、IoT機器では、大量のデータを処理しながら、消費電力や機器サイズを抑えることが求められます。
ASICでは、特定の処理に回路を最適化できるため、通信処理や信号処理など、用途に特化した機能を実現できます。

AIとデータセンター向けのカスタムASICという最新動向

近年では、AI処理やデータセンター向けの専用アクセラレータなどでも、特定の処理に最適化したカスタムASICが注目されています。
AI処理では膨大な演算を効率的に処理する必要があるため、汎用プロセッサだけでなく、用途に応じて専用化した半導体を組み合わせる設計が広がっています。
なお、暗号資産のマイニング専用機でも、特定のハッシュ計算に特化したASICが利用されています。

ASIC化を検討すべきタイミング

ASICは設計・製造に初期費用と一定の開発期間が必要になるため、すべての製品に適しているわけではありません。
一方で、製品の量産規模や要求性能、使用期間などによっては、ASIC化によって長期的なメリットが得られる場合があります。

FPGAからASICへ置き換える判断基準

FPGAは、出荷後でも回路を書き換えられる柔軟性が大きな特徴です。一方、ASICは製造時に回路を専用化するため、製造後に回路を変更することはできません。

使用中の汎用ICが生産終了になったとき

現在使用している汎用ICやアナログICの生産終了が決まった場合、まずは同等品や後継品への置き換えを検討します。
しかし、仕様に合う代替品が見つからない場合には、必要な機能をASICとして再設計することも選択肢になります。
特に、長期間生産する製品では、一度の代替品選定だけでなく、将来的な供給まで含めて検討することが重要です。

損益分岐点の考え方

ASIC化では、初期の開発費が大きくなる一方、量産時の1個あたりのコストを抑えられる可能性があるという特徴があります。
そのため、ASICと既存IC・FPGAのどちらが適しているかを判断する際には、初期費用だけでなく、想定生産数量を含めた総コストで比較する必要があります。
損益分岐点は、概念的には次のように考えられます。

ASICの総コスト = 初期開発費 + ASIC単価 × 生産数量

既存IC・FPGAの総コスト = 初期費用 + 既存IC・FPGA単価 × 生産数量

両者の総コストが交わる数量が、ASIC化を検討する際の一つの目安になります。
ただし、実際の判断ではコストだけでなく、性能、消費電力、サイズ、供給期間、EOLリスクなども考慮する必要があります。

ASICの量産コストについて詳しくはこちら ASICとFPGAの量産コスト比較はこちら

ASIC開発を外部に任せるという選択肢

ASIC開発では、半導体設計に関する専門的な知識が必要になるため、すべての工程を自社だけで対応することが難しい場合があります。
そのような場合には、ASIC開発の知見を持つ企業に設計・開発を委託する方法があります。
少量生産や試作段階から相談できる体制があれば、量産数量がまだ確定していない段階でもASIC化の可能性を検討できます。また、量産後も長期供給や品質規格への対応を含めた体制を事前に確認しておくことが重要です。

社内に半導体設計者がいなくても開発できる

ASIC開発では、顧客がすべての半導体設計を自社で行う必要はありません。
製品側が求める機能や電気的特性、使用環境などの情報を整理し、ASIC開発を支援する企業と仕様をすり合わせながら設計を進めることができます。
特に、既存製品の回路や使用しているICの情報がある場合には、それらをもとにASIC化の可能性を検討することもできます。

アナログとデジタルでは求められる設計知見が異なる。

ASICにはデジタル回路だけでなく、アナログ回路やアナログ・デジタル混載回路もあります。
デジタル回路では論理設計やタイミング、信号処理などが重要になる一方、アナログ回路では電圧・電流、ノイズ、温度特性、精度、素子ばらつきなどを考慮する必要があります。
そのため、ASIC開発を依頼する際には、自社製品に必要な回路分野に対応できる設計知見を持っているかを確認することが重要です。

相談前に整理しておきたい情報リスト

ASIC化を相談する際には、以下のような情報を整理しておくと、検討を進めやすくなります。

  • ASIC化したい製品・装置の概要
  • 現在使用しているICの型番
  • 現在の回路構成
  • 必要な機能
  • 電源電圧・電流
  • 必要な電気的特性
  • 動作温度範囲
  • 製品の年間生産数量
  • 想定する製品寿命
  • 使用しているICのEOL情報
  • 希望するパッケージ
  • 既存ICから変更できない仕様
  • ASIC化によって改善したい点

すべての情報が揃っていなくても、現在使用しているICや製品の情報からASIC化の可能性を検討できる場合があります。

よくある質問

ここでは、よくある質問をご紹介いたします。

ASICとFPGAはどちらを選ぶべきですか?

一概にどちらが適しているとはいえず、製品の仕様や生産数量、開発期間、必要な性能などによって判断が変わります。

FPGAは回路を書き換えられる柔軟性があるため、仕様変更が想定される製品や少量生産などに適しています。

一方、ASICは回路を専用化できるため、大量生産や低消費電力、小型化、特定用途への最適化などを重視する場合に検討されます。

何個作れば採算が合いますか?

一律に「○個以上」と決めることはできません。
ASICの開発費、ASICの単価、比較対象となるICやFPGAの単価、製品の生産数量などによって損益分岐点が変わるためです。
また、長期供給やEOL対策を目的としてASIC化する場合は、単純な単価比較だけでは判断できないケースもあります。

開発期間はどのくらいかかりますか?

ASICの開発期間は、回路規模、アナログ・デジタルの構成、プロセス、パッケージ、評価内容などによって大きく異なります。
仕様検討から設計、試作、評価、量産まで、それぞれの工程に期間が必要となるため、具体的な期間については開発内容を確認したうえで検討する必要があります。

社内に半導体設計者がいなくてもASIC化できますか?

可能です。

ASIC開発を支援する企業と仕様や要求特性をすり合わせながら、回路設計、シミュレーション、レイアウト、試作、評価などを進めることができます。

まずは現在使用しているICや製品仕様など、分かる範囲の情報から相談することも可能です。

アナログ回路もASIC化できますか?

可能です。

ASICにはデジタル回路だけでなく、アナログ回路やアナログ・デジタル混載回路(ミックスドシグナル)もあります。

センサー信号処理、電源・電流制御、各種計測回路など、製品固有のアナログ機能を専用ICとして実現することが検討できます。

まとめ

ASICは、特定の製品や用途に合わせて回路を専用設計できる半導体です。

FPGAや汎用ICと比較して開発時の初期負担は大きくなりますが、量産時のコスト、消費電力、小型化、性能、長期供給などを考慮すると、製品によってはASIC化が有効な選択肢となります。

特に、FPGAを長期間使用している、使用中のICがEOLになった、代替品が見つからない、製品を長期供給したい、既存回路を1つのICに集約したいといった場合には、ASIC化を検討する価値があります。

また、ASIC開発は必ずしも自社だけで行う必要はありません。製品仕様や現在使用しているICなどの情報をもとに、専門企業と相談しながら開発を進めることができます。

「ASIC化できるか分からない」という段階でも、まずは現在の製品や回路について相談することから始められます。

ジェピコセミコンダクターでは、アナログASICを中心とした半導体開発について、仕様検討から設計、試作、評価、量産まで、お客様の製品に合わせた開発を支援しています。既存ICのEOL対応や代替品の検討など、現在の半導体供給に関する課題についてもご相談ください。

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